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講堂朝礼〜生徒へのメッセージ〜

Messages for Students

「ヤマモモと赤ちゃん」教頭 鶴田葉月                                  

教頭 鶴田 葉月

 期末考査が,1週間後に迫ってきました。大学時代,私が所属するゼミの教授の試験は,範囲が,大学だからそんなことは当たり前なのですが,万葉仮名で表記された,注釈もないハードカバーの万葉集まるごと一冊でした。万葉集に収められているのは4,500首です。それを全部読んで覚えて勉強するのは本当に楽しかった。

 我が家の裏の林に,大きなヤマモモの木があって,初夏の今頃,たくさんの実がなります。一粒の大きさは小指の先ほどなのですが,今が旬で,ここ1週間ほどは,夜のうちに実が落ちて庭が真っ赤に染まっているのをホウキで掃いて集めてバケツに2杯。放っておくと発酵して臭うから,掃除します。掃除する頭の上にもポトポトと落ちてくる。掃除すると,庭がすっきりときれいになって,気分が晴れます。でも夕方にはまた,庭はレッドカーペットです。次の日もその次の日も…。

  掃除する後から後から散らかる様子は,海星で言うと,秋の中庭のケヤキでしょうか。風が吹くたびに,ザザアッと音を立てて雨のように葉が落ちてくる。中庭掃除の生徒が,「やばッ」と言いながら毎日リヤカーに満杯の落ち葉を掃除するのは,秋のお馴染みの風景です。

 さて,10日ほど前になりますが,卒業生が赤ちゃんを連れて遊びに来てくれました。赤ちゃんは,生後一か月だそうで,お母さんの腕の中ですやすや眠っていました。ときどき私たちの話し声に反応して,眉を寄せて泣きそうになり,口をむにゃむにゃ動かす,生まれたばかりの赤ちゃん特有の表情に,うっとりさせられました。赤ちゃんの頃の皆さんもそうでした。皆さんが寝たり食べたり泣いたりするだけで見る人は幸せになりました。赤ちゃんを育てているときはとても大変で,読書とか趣味の時間は全く取れません。それでも,今となっては大変だったいろいろは忘れて,かわいかったことだけを思い出します。

 このお母さんは,卒業してから,何度も学校に遊びに来てくれていました。ある時は,体育会やバザーを見に来て,差し入れをしてくれたこともありました。別の卒業生は,結婚します,とか,就職が決まりました,とか。今お付き合いしている彼氏です,と男子大学生を連れて来てくれる人もありました。海星は,多くの卒業生にとって,いつまでも懐かしいふるさとであるようです。

  あの赤ちゃんも,まもなくハイハイの時期が来て,タッチができるようになって,そして,おもちゃで遊ぶようになるでしょう。片づける端から端から散らかして。けれども,またすぐに散らかすからと言って,散らかしっぱなしにはできません。その都度その都度掃除し,片づけます。きれいな庭,きれいな部屋でいるのは少しの時間ですが,それでも,その少しの時間が気分いいから,また掃除して,片づける。

  勉強も同じです。たくさん勉強して,たくさん忘れ,でも復習すると,少しずつ覚える。またたくさん習ってたくさん忘れ,復習して少し覚える。覚えるのが気分いいから,忘れる以上に勉強する。

  私たちは,よい土に落ちた種。その時,その時にやるべきことをやるのがいいと思います。期末考査の準備もしっかり行ってください。

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