「希望」シスター入江 純子
5月は聖母月です。マリア様は、どんな希望のもとに、「あなたのお望みのままになるように」とご自分を大天使ガブリエルに委(ゆだ)ねたのでしょうか。神さまのお出来にならないことは何もないと信じて、イエス様のお母さまになることを承諾されたにちがいありません。
アヴェ・マリアの祈りは「喜びなさい、恵まれた方。主はあなたと共におられます。あなたは女の中で祝福された方です。」と唱えます。マリア様は、心を槍(やり)で貫(つらぬ)かれるような苦しみを味わわれたはずですが、「世の人は私を、女の中で幸いなものと呼ぶでしょう。」とも言っています。これは欺(あざむ)かれなかった希望を生きた者の幸いでしょうか。
さて、4月28日に全校生徒が、熊本、長崎、能古島にそれぞれの目的をもって出かけました。その中で、高3生は学院のルーツを訪ねて、熊本修道院とこうのとりのゆりかごを見学しています。雨の中、傘をさして玄関先に集まる皆さんに、「私たちは、あいにくの雨で嫌だなーと思っていますが、小さな草や木は大変喜んでいます。誰かが喜ぶのなら、私たちは雨でもいいよね。」と言いましたら、皆さんは、「はい、いいです。」と大きな声で応えました。シスターは、さすが「海星っ子」とうれしく思いました。
4月21日(ご復活の次の日)に帰天された教皇フランシスコの最後の言葉の中にも、 「この世の出来事はすべて流れに従っています。私たちに出来ることは、その流れの中で少し余白を与えることです。少しの譲り合い。少しの思いやり。少しの控え目さ。それが誰かにとってあたたかな息抜きとなります。」とあります。雨の日は、草木が息抜きしていますよ。
熊本修道院は日本管区の発祥の地です。敷地内にコール神父様とシスターたちのお墓があり、300人ほどが、復活の希望をもって眠っておられます。コール館(ハンセン病資料館)はハンセン病の方たちのお御堂でしたので、この方たちの祈りがしみ込んでいます。突然、不治の病の宣告を受けて本名も捨て、戸籍からも抜かれた方たちは、孤独の中で何に希望をもって祈っておられたのでしょうか。ご自分の現状を受け入れて生きる力でしょうか。復活でしょうか。
小学生の頃、シスターは、なぜ土の中から赤い花や黄色い花が咲くのか、不思議でした。それは小さい種が持っている遺伝子によるのだと知ったのは、ずっと後でした。地熱を感じて芽を出し、暴風雨や酷暑に耐えながら立派に花を咲かせます。人目につかない高山植物や夜中に咲くサボテンも、精一杯花を咲かせるのです。
「今日は生えていて、明日は炉(ろ)に投げ込まれる野の草でさえ神はこのように装ってくださる。 まして、あなたたちは、なおさらのことではないか」(「マタイによる福音書」6章30節)
私たちは、神さまに愛されて、今この時をこの場で生かされています。学校目標は 「愛をもって真理にむかう」です。この中に自分の希望を生きるその手段と方向が はっきりと示されています。
手段は、隣人を自分のように愛すること。方向は、真理に向かうことです。
シスターのひとこと
私はどんな種の遺伝子を貰(もら)ったのかな。
花が咲くかな。実がなるかな。仰(おお)せのままにわれになれかし。

採用情報
福岡海星女子学院